(2013年9月議会 ふなやま由美議員の一般質問)
◯ふなやま由美議員 障害を持つ子供たちの発達を保障し、よりよい教育環境の充実を求めて一般質問いたします。 学校教育法の改定により、特殊教育から特別支援教育へと支援の枠組みが大きく変わってから六年が経過しました。これにより、LD、ADHD、高機能自閉症などの発達障害を含めた障害を持つ全ての子供たちを学校で教育することが制度化されました。特別支援教育とは、障害のある子供たちの自立や社会参加に向けて、一人一人の教育的ニーズを把握して、その持てる力を高め、適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うものです。 一九九四年にユネスコで決議されたサラマンカ宣言では、全ての子供は教育への権利を有しており、満足のいく水準の学習を達成し、維持する機会を与えられなければならないという基本的理念が確認されています。障害のある子供が一般の教育から排除されずに、一人一人の発達を保障するインクルーシブ教育の考え方を、本市の特別支援教育で実践していくことが求められています。 先日、木町通小学校を訪問しました。全校児童の通う玄関には、障害を持つ子供たち一人一人が毛筆で書いた言葉が張ってあります。ありがとうの言葉を全身の力を込めて書いた文字に心を打たれました。市内の全ての学校現場では、それぞれの子供たちのよさをしっかりと伸ばしてやりたいと必死の努力がされています。 仙台市は、障害を持つ子供たちや保護者の願いに応えて、今から五十五年前に、日本で初めての通級方式である、ことばの教室を設置しました。また、障害のある子供は、学校に通わなくてもいいという就学免除や就学猶予がされた時代に、鶴谷養護学校を設置し、すぐれた教育実践を行うなど、この子らを世の光に、の熱い思いで、全国に先駆けて取り組んできた歴史があります。この歴史と伝統をさらに発展させて、一人一人の教育ニーズに応えるインクルーシブ教育を実践できるよう施策の推進を図るべきです。まず、市長の御見解を伺います。 本市の学校で、特別支援教育を受ける児童生徒数は二千九百二十四人で、そのうち、専門機関でLDやADHD、高機能自閉症などの診断を受けて、配慮してほしいと保護者から申し出のあった児童生徒数は、今年度一千四百二十三人になっています。十年前と比べて約千人ふえています。それ以外に、特別な配慮が必要であると学校が考える児童生徒数は千八百八人で、現在支援している児童生徒数を合わせると約三千二百人に上ります。 市は、この間、普通学級に在籍する障害のある児童生徒を支援するために、指導補助員を配置してきましたが、支援ニーズに追いついていない状況です。今年度、百校から二百三十人の児童生徒が支援が必要だと申請がありますが、百四十四人の指導補助員しか配置できていません。授業中に教室を飛び出し、廊下を走り回る子供を先生が追いかける状況はいまだに改善されていません。ある学校では、教室でトラブルが起きてビーカーを投げたり、扇風機の中に手を入れたりする子供もいて、安全をいかに守るか命がけですと話されていた教職員の方もいました。二名から三名の子供を一人の指導補助員が支援するクラスもあり、現場からは、とても手が回らないという声が出されています。 また、学校から申請を出しても、市教育局の判断で支援対象とはみなされない子供が五人います。障害の程度が重いため、特別支援学級での支援が必要と判断された子供が、保護者の希望により普通学級で学ぶ場合には、指導補助員の配置対象から外されるというのです。教室での学習支援がより困難な状況になってしまうことは解決しなければなりません。要綱や規則で特に決めているわけではなく、運用で対象外としているのですから、こうしたケースも指導補助員の対象とすべきです。一人一人の児童生徒のニーズに合った支援を行えるよう予算を増額し、指導補助員をふやすことを求めますが、いかがでしょうか、伺います。 次に、特別支援学級についてです。知的障害や肢体不自由、自閉症、情緒障害などの障害の内容ごとに学級編制がされ、現在、小学校で七百七十人、中学校で三百八十九人の子供たちが学んでいます。一人一人の障害の程度も全く違い、毎日変化する子供たちを支援し、学びを保障するために専門的な教育が欠かせません。 ある中学校の授業風景を見学させていただきました。二クラス合同で数学の授業が行われていました。体格も大きくなった生徒たちが、すれ違うのも困難な狭い教室で学んでいます。ある生徒は割り算、ある生徒は掛け算、ある生徒は体積を求める計算など、十人全員が違うプリントで学んでいました。言葉が話せず、おむつをしている生徒や授業中奇声を上げるなど、重い障害を持つ生徒もいます。市は、指導支援員の配置と、指導困難学級の対応として、市費で十六人の非常勤講師を配置しています。子供たちが十分な教育を受けられるよう、必要なところには講師を配置すべきです。いかがでしょうか、伺います。 そもそも、八人までで一学級という国の特別支援学級の学級編制基準に問題があります。インクルーシブ教育と言いながら、十分な財政措置を行わない国の姿勢を改めさせ、学級編制基準をもっと引き下げるよう求めるべきです。いかがでしょうか。 国がやらなければ県や市がやる、この姿勢と努力が求められています。山形県では、今年度から学級編制を六人までで一学級に改善しています。国基準を上回る分の教員配置の費用は、県が独自で予算措置を行っています。宮城県にもぜひ基準を見直して、教員配置を行うよう強く求めるべきです。いかがでしょうか、伺います。 県がやらなければ、仙台市独自で学級編制基準を見直すべきです。これまでも求めているように、せめて五人までで一学級に改善すべきです。いかがでしょうか、伺います。 そもそも、子供たちが落ちついて学び、その子のニーズに合った支援を進めるためには、少人数学級を実現することが喫緊の課題です。加配や緊急雇用対応などその場しのぎの対応ではなく、抜本的な教員の増員を行うべきです。秋田県では、三十人程度の少人数学級を小学校低学年と中学年、中学一、二年生で実施し、さらに来年度以降、小学校高学年と中学三年生への拡大を目指しています。また、政令市でも、市が独自に少人数学級に取り組み、広島市では小学校の全学年と中学一年生まで、静岡市や浜松市では小学五年生から中学三年生まで三十五人以下学級にしています。求められているのは、一人一人の、わかってうれしい、これを大事にする教育です。 民主党政権時代に、国民要求に応えた数少ない施策として、昨年度までに小学一、二年生の三十五人以下学級を実施し、今年度から五年かけて中三までの拡大を目指すことを決めていました。ところが、安倍自公政権は、これを白紙にしてしまいました。国民の願いに背を向ける後退であり、許されません。少人数学級を確実に進めていくよう国に強く求めるべきですが、いかがでしょうか。また、国に求めると同時に、仙台市が思い切って予算をふやして、少人数学級を実施すべきです。いかがでしょうか、伺います。 障害を持つ子供たちや保護者から切実に求められているのが、通級指導教室をもっとふやしてほしいという願いです。現在、小学校には言語障害が十二校、難聴が一校、LD等で四校しか通級指導教室がありません。中学校で難聴の子供が通う教室は、青葉区の第二中学校、LD等は五城中学校だけです。市域面積がこれだけ広い本市で、余りにも少な過ぎます。通級指導教室に通うために学校のそばに引っ越し、生活を大きく変えざるを得ない保護者や、地域には通える学校がないため、通級指導を諦める保護者もいます。障害を持つ子供たちが、住んでいる場所の近くで通級指導教室を受けられるように、もっとふやすべきです。いかがでしょうか、伺います。 次に、特別支援学校の増設について伺います。 仙台圏の県立支援学校の過大、過密の問題は深刻さを増しています。この間、保護者や学校関係者を初め多くの方々から、改善を求める運動が粘り強く取り組まれてきました。こうした声に応えて、県はやっと重い腰を上げて、二〇一〇年に特別支援学校教育環境整備計画を策定し、来年度から光明支援学校の増設や青葉区小松島に知的障害児を対象とした支援学校が新設されることになりました。しかし、もともとの在籍数が多い上、これから増加する分を十分に見込んでいない計画のために、矛盾は解決していません。同校の開校に伴って、名取支援学校に在籍する太白区の山田や人来田、茂庭台の中学校区の生徒が、市北部にある学校に転校しなければならず、今まで以上に遠距離通学を余儀なくされると、強い不安や懸念の声が寄せられています。 宮城県教育委員会の資料によれば、学校が増設される二〇一四年度当初の三校の在籍見込み数は、光明支援学校で二百八十八人、名取で二百二十八人、利府で二百三十人で、これでもまだまだ児童生徒数は多い状況です。来春開校を予定する小松島も、当初計画した百五十人程度という見込みを超えて、約百七十人を受け入れるそうです。県の計画のままでは、過大、過密と狭隘化の問題は解決していません。改めて宮城県に対して、特別支援学校教育環境整備計画を見直して、特別支援学校を増設するよう強く求めるべきです。いかがでしょうか、伺います。 先日、名取支援学校に伺いました。今年度、在籍児童生徒数は三百人を超えて、この十年で約二倍に増加しています。校舎を継ぎ足し、プレハブ校舎を建てて教室をふやし、迷路のような状況です。教室が不足し、木工などの作業学習を行う特別教室も潰しています。それでも教室が足りず、小学校では三人の教室に倍の六人、高等部では八人の教室に十三人の子供たちが学び、肩がぶつかるぐらいぎゅうぎゅう詰めで、とても気持ちを落ちつかせるどころではありません。重度重複障害のある子供を含め、重い障害の子もこうした環境の中に置かれています。過密化のため、インフルエンザが流行すれば一気に感染してしまい、ことしの春の卒業式を延期せざるを得なかったとのことです。 校庭は、公園のゲートボール場より狭く、キャッチボールするのが精いっぱいです。体育の授業は、学校周辺の田んぼのあぜ道を走っているというのです。送迎時間になれば大型バス十二台、放課後ケアを行う施設の車二十台が玄関前に列をなしていました。子供たちをゆっくり送り出す余裕もありません。なぜ、障害を持っている子供たちの環境が、こんな状態のまま何年間も放置されているのでしょうか。市長は、特別支援学校に行き、仙台市の子供たちの現状を実際に自分の目で見たことがありますか。仙台市の子供たちが、こういう中で学んでいることを何とも思わないのでしょうか、お答えください。 仙台圏の特別支援学校に通う児童生徒のうち、今年度の仙台市居住の児童生徒数は、利府支援学校では二百五十七人の在籍者のうち七十三人、名取支援学校では三百一人のうち百九十三人に上ります。ことし七月には、障害を持つ子供たちの保護者の皆さん、教育関係の方々が、仙台市南部に、ぜひ特別支援学校を増設してほしいと、仙台市長や仙台市教育委員会、教育長に要望書を提出しています。この切実な願いは、八月に開かれた定例の教育委員会で初めて協議事項として取り上げられ、議論されたことは画期的なことです。協議の中では、特別支援学校は県に設置義務があるから、市は設置しないという市の方針に対して、教育委員からは、政令市が設置する場合、どういう支援を要するのかなどの説明をきちんとすべきだ。単に県の役目です、では回答にならないなどの意見が出されました。 また、八月には、就学前の通所施設の園長の方々が連名で、幼児期から大人までの一貫した障害児のサポート体制を確立し、継続した支援を行うためにも、仙台市に特別支援学校の増設を求める要望書を提出しています。仙台市北部アーチルに加えて、南部アーチルを開設し、乳幼児期から青年期までの相談、支援の拠点として役割を果たしています。さらに連携しながら継続して支援を行うために、仙台市南部への特別支援学校の開設が強く求められています。 特別支援学校を政令市が設置してはいけない理由はどこにもありません。現に、横浜市の十二校を筆頭に、人口九十七万人の北九州市で九校、人口規模が仙台より少ない新潟市や堺市で二校、千葉市で三校設置しています。人口八十万人を超える政令市十五市の中で、一校しかないのは広島と仙台の二つだけです。熊本市では、ことし三月に、特別支援学校高等部整備基本計画を策定して、二〇一七年度に市立特別支援学校の開設を目指しています。 特別支援学校を設置するための建設費は、約二十二億円あればできます。年間に学校を運営するために必要な費用は、鶴谷特別支援学校の場合で、二〇一二年度決算では約一億六千万円あればできます。仙台市も障害のある子供たちが、みずから生活する地域社会の中で必要な教育を受けられるよう、仙台市の問題として解決すべきです。もう待ったなしです。市長、特別支援学校を仙台市南部につくる決断をすべきです。いかがでしょうか、伺います。 そもそも特別支援学校には、教育を保障するにふさわしい条件を整えるための国の基準がありません。そのために、劣悪な教育環境や人権無視の状態でも、財政難だから仕方ないと放置されてきたのです。過密になっても、歯どめをかけるルールさえつくられていないことは、教育行政が果たすべき役割を放棄していると言わざるを得ません。 文部科学省は、二〇〇八年に、特別支援学校の大規模化、狭隘化への対応を全国に通知しましたが、必要な財源保障も行わず、全く不十分なものでした。こうした対応を抜本的に改めるべきです。子供の発達を保障する教育環境の整備を進め、具体的体制を整えるべきです。国に対して、特別支援学校の設置基準をつくるよう求めるべきですが、いかがでしょうか、伺います。 二〇一二年七月に、中央教育審議会の特別支援教育のあり方に関する特別委員会で、共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進について、報告書がまとめられました。その中にも、障害のある幼児、児童、生徒の教育的ニーズに応じることができる、多様な学びの場の整備が必要であることが示されています。 本市の教育振興基本計画の中で、特別支援教育の推進を位置づけていますが、特別支援教育推進のためのプランを策定していません。地域の学校における障害を持つ子供たちの支援の充実とあわせて、特別支援学校を位置づけて検討を直ちに行うべきです。専門家だけでなく、当事者が直接参加できる協議の場を立ち上げ、課題を明確化させて、年次目標を明らかにしながら、特別支援教育推進プランを策定することを求めますが、いかがでしょうか、お伺いいたします。 障害のある子供への施策を進める上で、差別の問題や権利保障の問題は避けては通れません。二〇〇八年に発効した国連の障害者権利条約は、障害のある人が障害のない人と平等に人権を保障され、豊かに生きられる社会を実現することを提唱しています。 日本は、障害者権利条約の批准を目指していますが、この取り組みの中で、障害者差別解消法がつくられ、二〇一六年四月から施行されます。差別の定義が法的に位置づけられていないことや、紛争解決のための相談や調整を行う第三者機関の設置などが盛り込まれていないなどの不十分な点はありますが、当事者や関係者の皆さんの粘り強い運動の成果です。 障害のある方々は、地域社会の中で、間接的にも直接的にも、まだまだ困難な状況に置かれ、合理的配慮がなされない環境にあります。障害のある人全ての権利を保障し、差別をなくしていく地域社会の醸成のための政治の役割が、今ほど求められているときはありません。そのために、障害者当事者の参画はもちろん、広く市民や事業所など各層に理解と合意を働きかけ、インクルージョンを実践する視点で、障害者差別禁止条例を制定すべきです。このことを最後に伺って、私の第一問といたします。
◯市長 ただいまの、ふなやま由美議員の御質問にお答えを申し上げます。 障害者への差別を禁止する条例の制定について、お答えを申し上げます。 さきの通常国会におきまして、仮称障害者の権利条約の批准に向けた法整備として、いわゆる障害者差別解消法が成立し、平成二十八年四月より施行されることとなっております。 また、このたびの市長選挙におけます障害者団体の方々との懇談におきましては、出席された皆様方からの条例の制定に対する熱い思いをお伺いをし、私といたしましても、障害のある方々の日常生活、また社会生活上の障壁を取り除くとともに、市民の皆様の理解の促進を図るため、条例の制定が必要であると認識をいたしているものでございます。 これまでも、さまざまな機会を捉えまして、障害のある方とその御家族、支援者の皆様と意見の交換を行ってまいったところでございますが、障害のある方とその御家族の皆様が、地域社会から孤立することなく安心して暮らしていくためには、障害に対する正しい知識の普及啓発や市民の障害への理解を深める取り組みを進めることが重要と考えております。 今後、条例の策定に向けまして、障害者施策推進協議会における審議のほか、障害者団体の皆様とも協議を重ねながら、幅広い視点に立って検討を進めてまいりたいと考えております。