(2019年12月議会 高村直也議員の討論)
〇高村直也議員 日本共産党仙台市議団の高村直也です。ただいま議題となっております決議案第4号「本市における宿泊税の導入を求める件」について反対討論を行います。
今月11日、宿泊税の導入に反対を表明する緊急集会が、宮城県ホテル旅館生活衛生同業組合、みやぎおかみ会、日本旅館協会東北支部連合会宮城県支部の3団体により開催されました。当事者である宿泊業者のみなさんから、宿泊税に「断固反対」という明確な意思表示がされたものです。当事者のみなさんからの声を重く受け止めるべきです。
この緊急集会では、宿泊税に反対する理由の1つ目として、県民にとって大きな負担となることが指摘されました。宮城県内観光地の宿泊客の約2分の1は宮城県民だと言われており、大阪や京都などとは状況が異なります。
2つ目の理由として、取りやすいところから取る不公平な税制であることをあげています。観光振興が目的であるならば、その財源を宿泊業への課税のみに求めるのは安易で不公平であるという指摘はもっともです。実際に、仙台市が今年3月に策定した「交流人口ビジネス活性化戦略」においても、交流人口の概念は、宿泊施設や飲食店、観光施設の利用のみならず、出張やスポーツ観戦で訪れる方たちなど様々な視点を「重視」するものです。観光振興施策を進めることで恩恵を受けるのは、宿泊業だけではありません。
宿泊施設の利用者の中には、部活の大会などのために利用する中高生なども含まれます。なるべくこうした費用を抑えて利用しようとする方たちにも負担増を強いることになります。またユースホステルなど低価格で提供している宿泊施設にとっては、増税分を価格に転嫁できないという実態があり、経営を大きく揺るがす問題です。
宿泊税の導入をめぐる議論の発端は、宮城県の観光振興財源検討会議です。11月の第7回検討会議において、宿泊税を導入する提案が事務局から行われ、続く第8回検討会議を受けて最終の報告書案がまとめられました。これに対するパブリックコメントは、12月6日に始まり、宿泊業界の繁忙期にあたる年末年始をはさんで、来年1月6日にも締め切られてしまいます。また、第7回検討会議で報告された「財源確保の在り方に関する関係者からの意見聴取」では、ヒアリングの対象となる19事業者・団体のうち、宿泊業の関係者は7者だけとなっています。当事者から十分に意見を聞くことなく進められた、拙速な議論であると言わざるを得ません。
本決議案では、仙台市においても、時機を逸することなく、宿泊税を導入することを求めていますが、そもそも問題のある宿泊税の導入に私たちは反対であり、容認するわけにはいきません。また本決議案は「本市においても、宮城県に合わせて本市独自の宿泊税を導入する」としていますが、県議会でも、与野党から異論が出ており、自民党議員からも「そこまで新たな財源が必要か」との発言があったと報道されています。県での導入も、まだ不透明なままです。
今年10月には消費税の増税も行われたばかりで、その影響が懸念されます。消費税が8%になったとき、観光庁の旅行・観光消費動向調査で、宿泊を伴う国内延べ旅行者数が、4期連続で前年を割り込む結果となりました。今回の10%への消費税増税が大打撃であることは明らかです。
すでに仙台市は、鉱泉浴場のある施設に宿泊する場合に、入湯税150円を課しています。消費税、入湯税の上に、宿泊税を導入すれば3重に課税されることになります。この上にさらに、本件決議案では、県と市で宿泊税を導入することで二重課税となる福岡県と福岡市、北九州市の取り組みが実例として挙げられていますが、宮城県と仙台市も両方が宿泊税を導入するとすれば、4重に課税されることになってしまいます。宿泊業者のみなさんには事務的な負担も含め、重い課税となることは明らかです。
このような問題をはらむ宿泊税の導入は、県がやるから仙台市も進めるよう求めるのではなくて、いま声をあげている宿泊業者のみなさんと一緒に、仙台市議会として県の宿泊税の導入をやめるよう求めるべきです。このことを申し上げ、決議案への反対討論といたします。