【概要】
〇市バス会計年度任用職員の処遇改善
〇市バス運転手の給与体系見直し
〇障害者65歳での介護保険への移行による課題
〇復興公営住宅のコミュニティ維持を困難にする収入超過者問題
〇嵯峨サダ子議員
日本共産党の嵯峨サダ子です。市民の願いがより叶う市政の実現を求めて一般質問いたします。
私はこれまで市バス乗務員の働き方や賃金等について取り上げ改善を求めてきました。その一つは、嘱託職員の処遇改善です。仙台の観光の一翼を担っているループバスの運転手は運転しながら観光案内をし、海外からのお客様の接遇にも心を砕き誇りをもって業務にあたっています。しかし、嘱託職員のため賃金が低いことを問題にしてきました。また、大雪の日に無理な運航を支持され、坂道で動けなくなるという出来事もありました。トラック仕様の車両のため、運転席に冷房設備がなく過酷な運転を強いられました。今は新しい車両になり、改善されています。
2020年4月から路線バスを含む嘱託職員が会計年度任用職員となりました。期末手当が新たに支給され、昇給もできるようになったことは前進です。しかし、基本月額は低く抑えられ十分なものとは言えません。会計年度任用職員は人件費削減のために採用されています。勤務時間に差があるものの、正規職員と業務内容は同じです。働き方を良くすることは市民サービスの向上にもつながります。業務に見合う賃金水準となるよう、賃金を直ちに引き上げるべきです。いかがでしょうか。伺います。
正規職員の場合も、1998年度から交通事業の経営健全化を理由に行政職給料表が適用される一般職(一)表から、バス事業運転手の(二)表に変更されて賃金が大幅に下がりました。平均年齢49.9歳で給料月額27万6015円です。家計を支えられる金額でしょうか。子育て世代の方などは給料を補填するために公休出勤を申し出て働き、それでも給料が安くて辞めていく人が多いと聞いています。
働き方についても、深夜の勤務終了から次の日の勤務までの「休息時間」が8時間しかないため、通勤や食事、入浴をすると睡眠時間は4時間~5時間しか取れず、睡眠不足のまま、運転せざるを得なくなる実態を示し、休息時間を長くするよう求めました。運転業務は乗客の命を預かる大事な仕事です。安全運行、乗客の接遇等を一人でこなす大変な仕事を正当に評価し、モチベーションが上がる処遇改善が必要です。早朝から深夜まで市民の足を守るために働いている運転手をもっと大事にすべきです。給与表を元の行税(一)表に戻すことを求めます。そうすることで、会計年度任用職員の処遇改善にもつながります。いかがでしょうか、伺います。
視聴覚障害者の切実な要望にも取り組んできました。地下鉄の切符を片面から両面対応へ改善、車両内部の扉に点字で車両番号を設置、ホームの点字ブロックを最新のものに取り換えるなどの改善を図ってきました。その中でも大きかったのは、地下鉄南北線のホームに転落防止柵を設置したことです。視覚障害者から「地下鉄のホームは欄干のない橋を渡るようで怖い。転落防止柵を設置してほしい」という切実な訴えが始まりでした。
今、障害者の方から不安を寄せられているのは、65歳になると介護保険サービスへの移行を求められる問題です。障害者総合支援法の障害福祉サービスを利用している障害者が65歳を迎える頃になると自治体の担当課から「介護保険の申請をするように」との連絡がきます。これは総合支援法第7条に「介護保険優先」規定があるからです。この7条は「自立支援給付は、介護保険法の規定による介護給付のうち、自立支援給付に相当するものを受け、または利用することが出来る時はその限度において行わない」と規定しています。これを根拠にして自治体は、障害者に制度移行を求めています。
障害者にとって障害福祉サービスから介護保険に変更されると、それまで受けていたサービスの時間が制約され、その内容も大きく低下し、生活することはもちろんのこと、生きていくことさえ難しくなります。そもそも、障害福祉と介護保険は制度の目的が異なるからです。障害福祉サービスの目的は個人として尊重されるよう、障害者の社会参加を含めた日常生活全般を保障することです。一方、介護保険サービスは要介護状態の高齢者の日常生活に限定して最小限の支援をするというものです。
こうした障害と介護の特性を無視し、無理に制度に当てはめるやり方で障害を持っている方の安心した生活につながっていると考えていらっしゃるのか、伺います。
また住民税非課税世帯の障害者の場合、障害福祉サービスは無料ですが、介護保険だと月1万5000円の利用者負担が発生します。収入が限られている障害者にとって死活問題です。誕生月を境に加齢による要介護になったわけでもないのに必要なサービスを制限されたうえ、新たな経済的負担を負わせられる点について市はどのように捉えているのか、ご認識を伺います。
本市は総合支援法第7条の規定にのっとり、介護保険への移行を勧奨しています。ただし、すべてのケースで一律に介護保険サービスへの切り替えをおこなっているわけではなく、以降にあたっては区の障害高齢課で事情を伺い、その方にとって必要な支援を介護保険サービスにより受けることが出来るかを判断し、必要に応じて介護保険と障害福祉を併用するなど、柔軟な対応をおこなっているとしています。しかし介護サービスに障害福祉サービスを上乗せしたとしても、重度の障害者の場合は従前のような暮らしは望めません。
介護保険の申請をしなかったことを理由に、千葉市が65歳で障害福祉サービス需給の申請を却下したのは違法・遺憾などとして、障害のある男性が同市を訴えた訴訟の控訴審判決が3月24日出されました。裁判長は千葉地裁判決を変更し、同市の決定を取り消すよう命じました。
また岡山市では、2013年に千葉市の男性と同様の訴訟を起こした男性が5年間に及ぶ闘いのすえ、一審、二審とも勝訴し二審判決は確定しました。同判決は自治体に裁量権があるとし、障害福祉と介護保険の理念・内容・利用料などの違いを踏まえた上で市の対応を違法としました。障害者の暮らしの実態を踏まえた重要な判断です。
もともと厚労省は障害者の介護保険移行に関しては、本人の事情を丁寧に聞き対応するようにとの通知を出しています。ところが、そう言いながら第7条は継続したままで介護保険優先も強調しています。この姿勢が現場に混乱を招いています。
障害者の訴えを受け止め、介護保険への移行を強いる施策をやめるよう、市として国に求めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。伺います。
東京都国立市は総合支援法ができた時に、当事者抜きに当事者のことを決めないという決意をし「しょうがいしゃが当たり前に暮らすまち宣言」をし、2015年に同宣言を条例化しました。その後、障害当事者の粘り強い交渉と市議会での論戦もあり、市が介護保険サービスの強制はしない旨の答弁をしました。
国立市長は「介護保険の要介護5のサービスでは障害者の活動的な生活を組み立てられない」言い切り、本人が申請しない限り介護保険サービスは適用しないことを決めました。
本市は「仙台市障害を理由とする差別をなくし、障害のある人もない人も共に暮らしやすいまちをつくる条例」を持っています。障害者本人の基本的人権を尊重し、自己決定権を保障する立場で障害者福祉サービスの利用と介護サービス利用は、その人がその人らしく暮らせるように柔軟に運用すべきです。いかがでしょうか、伺います。
復興公営住宅の家賃問題でも繰り返し取り上げてきました。復興公営住宅の収入超過者対策について、私たちはこれまでにも国の通知が示すように入居収入基準を25万9000円まで引き上げることや、県内の被災自治体が独自に収入超過者対策をおこなっていること、岩手県のように条例の付則(ふそく)を改正して時限的にでも住み続けることができるようにしていることなどを示し提案してきました。財源についても、家賃低廉化交付金や特別家賃低減化交付金を使えば十分に対策はできることを求めてきました。未曽有の大災害から必死で立ち上がろうとしている市民を支えることこそ、市がやるべき仕事ではないでしょうか。市長の決断で収入超過者対策をおこない、被災者が安心して住み続けることができるようにすべきです。伺います。
復興公営住宅は市内、市外を問わず、被災の状況も違う被災者が入居しました。こうした中で自治会や町内会を立ち上げ運営するというのは並み大抵ではなかったと思います。ある復興公営住宅の自治会長さんの話によれば「入居時に市は『復興公営住宅は世代間のバランスをとり、コミュニティミックスで入居させるので自治会は継続できる』と説明した。ところが入居時に学生だった子どもが働いて収入が増える場合などに、収入超過者となって退去する世帯が少なくない」また、別の住宅の自治会の役員の方は「収入超過で若い世帯が出ていくのはもったいない。役員で一人暮らしの高齢者の見守り活動を続けているが、いつまでできるかわからない」と語っています。こうした状況の中で市は被災者の見守りや相談、サロン活動などを支援してきた「地域支えあいセンター事業」を今年3月で一方的に終了しました。一人一人の被災者がどのような暮らしをしているのか、市には把握し続ける責任があると思いますが、いかがでしょうか、伺います。
東日本大震災における本市の被災者支援は本当に被災者に寄り添ったものになっているでしょうか。私たちは市の復興のあり方について、その都度問題提起してきました。
私は阪神淡路大震災が発生した年におこなわれた市議選で初当選しました。神戸の被災地に出向いて、宮城県沖地震の再来が言われている仙台で、壊れた住宅の下敷きになって命が失われることのないようにと決意し、戸建木造住宅の耐震化条例を提案し、支援の制度を実現させました。東日本大震災では甚大な宅地被害の復旧を被災者と共に運動し、職員の皆さんとも力を合わせて制度の拡充、創設も実現しながら復旧につなげることができました。自治体の仕事は住民の命と暮らしを守ることが優先です。そのリーダーシップを果たすのが市長です。
郡市長は就任直後に被災者に会って、復興公営住宅の特別家賃低減延長を求める署名を受け取り、制度の延長を決断しました。こういう決断を市民は望んでいます。郡市長が今後もその姿勢を貫き、市政運営にあたることをもとめますが、いかがでしょうか。このことを伺って私の第一問といたします。
◯市長(郡和子)
嵯峨サダ子議員におかれましては、7期28年の長きにわたって、福祉行政をはじめとする市政各般にわたり本市の発展に御貢献をなされましたこと、深く敬意を表し、御質問にお答えしてまいります。
障害福祉サービスから介護保険制度への移行に関する国への要望に関してお答え申し上げます。
現行制度上、介護保険において障害福祉サービスに相当するサービスがある場合には、法令等の定めにより、介護保険の利用が優先されるものとなっております。
一方で、介護保険に該当するものがない場合や、御本人の障害状況などから、必要となるサービスの量が介護保険だけでは確保できない場合には、その範囲において障害福祉サービスを支給することが可能でございます。
これらの2つの制度の運用につきまして、法に定める優先原則に関する具体的な基準が国のほうから明確に示されておりませんで、自治体によって判断が異なる場合もございます。
このため、他の政令市と共に、65歳に達した方が障害福祉サービスを御利用いただく際のサービスの種類や量といった基準について、明確にするように国に重ねて要望してまいってきたところでございます。
障害のある方お一人お一人が、年齢を重ねても住み慣れた地域で安心して暮らしていただけることが何より大切でありますので、制度が適切に運用されるよう、引き続き国に働きかけてまいる所存でございます。
次に、市政運営に当たる姿勢についてのお尋ねにお答えを申し上げます。
私は、全ての市民の皆様が力を発揮し、健やかに安心して暮らせる町の実現こそが市長としての最大の責務であるとの思いで、この間も市政運営に当たってまいりました。
そのため、市民生活の現場から聞こえてくるお一人お一人の声に、これに親身に向き合って、必要な支援や施策につなげていくことが不可欠と考えております。私自身、女性・若者活躍推進会議を立ち上げ、様々な支援の現場で活動されている皆様方との意見交換を行い支援の拡充を図ってくるなど、幅広い立場の皆様方、市民、団体の皆様方からの御意見に耳を傾け、市政に生かす道、これを模索しながら政策判断を行ってまいりました。
引き続き、市政の運営の原点は、市民の皆さんの声にあるということを心に深く刻み、市民の皆様方の御理解と御協力をいただきながら、市民福祉の向上という本市の使命を全うすべく、邁進してまいる所存でございます。
そのほかの御質問に関しましては、交通事業管理者並びに関係の局長から御答弁を申し上げます。
◯健康福祉局長(加藤邦治)
初めに、65歳以上の障害者の介護保険サービスへの移行について、市長がお答えした以外の部分の御質問についてお答え申し上げます。
現行制度上、介護保険において、障害福祉サービスに相当するサービスがある場合、介護保険の利用が優先されることとなりますが、その適用等に関する具体的な基準等については、いまだ国から示されていないところでございます。
御指摘の裁判につきましては、介護保険サービスの申請をしていない利用者に対して、それぞれの自治体が障害福祉サービスの利用を停止したことの是非を問うものであり、判決においては、介護保険優先の原則自体が否定されたものではないと承知をしております。
本市といたしましては、こうした原則の下、適切な制度運営を図りながら、御本人の障害状況や障害福祉サービス等に関する利用意向を丁寧に把握し、安心した生活に向けた支援に努めているところでございます。
次に、介護保険サービスへの移行に伴う経済的負担についてでございます。
65歳以降に介護保険サービスに移行された方に対しましては、所得等の一定の要件の下、利用者負担を償還する仕組みが設けられてございます。
引き続き、こうした制度も御案内しながら、介護保険に移行した場合も安心してサービスを御利用いただけるよう努めてまいります。
次に、復興公営住宅に入居された被災者の方の状況把握についてのお尋ねでございます。
地域支えあいセンターの事業終了を踏まえ、各区関係課と社会福祉協議会の各区事務所が協調し、御本人の御了解の下、個々の世帯の特性も含め情報共有を行っております。
さらに、被災者や自治会長などからの困り事などの相談に応じるとともに、見守りや戸別訪問も行っているところでございます。
引き続き、各区と社会福祉協議会などの関係機関が相互に連携を図るとともに、地域の皆様と適切に情報共有をしながら、被災者お一人お一人の状態像や生活状況の変化に合わせた対応に努めてまいりたいと存じます。
◯都市整備局長(反畑勇樹)
私からは、復興公営住宅における収入超過者への対応についてお答えいたします。
国の通知では、収入基準額は自治体の実情に応じて条例により定めることとなっておりますが、他の自治体におきましては、人口流出の抑制や空室対策など、それぞれの事情を考慮して定めているものと捉えております。
本市におきましては、民間賃貸住宅の供給状況や多様な家賃設定などから、個々の実情に応じた住まいの選択が可能であること、また公営住宅には住宅セーフティーネットとしての役割がある中、応募倍率も高い水準で推移しておりますことから、収入超過者に対する特段の対応は困難と考えているところでございます。
◯交通事業管理者(吉野博明)
私から、交通局に係る2点の御質問にお答え申し上げます。
まず、会計年度任用職員の賃金引上げについてでございます。
本市バス事業は、乗車人員の減少による経営の悪化に対応するため、様々な経営効率化策に取り組んでまいりましたが、事業費用の多くの部分を人件費が占めており、この抑制を図る必要性から、現在の職員採用制度や給与体系を構築してきたところでございます。
こうした状況の中、会計年度任用職員の給与につきましては、一般職の地方公務員であることを踏まえ、正職員に適用される企業職給料表や初任給の基準を用いるとともに、職務経験に応じて一定の号俸を加算しております。また、期末手当も支給をしておるところでございます。これらにより嘱託職員時代と比較しまして、処遇が改善されたものと認識をいたしております。
今般、会計年度任用職員に対しまして勤勉手当も支給可能とする法改正がなされたところでございますので、具体の制度設計などについて適切に対応し、今後の処遇改善にもつなげてまいりたいと存じます。
次に、企業職給料表(二)表を(一)表に戻すことについてでございます。
企業職員の給与は、地方公営企業法において、同一または類似の職種の国や地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与、当該地方公営企業の経営状況その他の事情を考慮して定めなければならないとされております。
企業職給料表(二)表につきましては、厳しい経営環境の中、交通事業の経営健全化に向け、国の同種の職種や民間の運輸職員の給与水準との均衡を図ることを目的に導入したものでございます。
また、バス事業を営みます他の政令市の公営交通事業者を見ましても、全ての都市で運輸職員独自の給料表を導入しているところでございます。
運輸職員の給料表につきましては、給料表切替え後も厳しい経営状況が続いていることや、他公営交通事業の給料表の導入状況を総合的に勘案いたしますと、現行の給料表(二)表を維持することが基本であると考えているところでございます。